2025年12月期は売上高、営業利益ともに過去最高を更新した株式会社BuySell Technologies(以下、バイセル)。海外展開に向け、3月には中国でライブコマース事業を展開する吉奢礼との提携発表など勢いに乗ります。
2026年3月26日付で取締役CSOに就任した中村隆之さんは「『リユース×テクノロジー』という領域こそが、AI時代において最も面白く、大きな成果を出せる場所」と語ります。株式会社リクルート、株式会社メドレーを経て、次なる挑戦の場にバイセルを選んだ理由や、入社直後に着手した大規模なグループ再編の舞台裏、成長戦略について聞きました。
◆プロフィール
株式会社BuySell Technologies
取締役CSO
中村 隆之(なかむら・たかゆき)氏
2002年に名古屋大学卒業後、株式会社リクルート(現 株式会社リクルートホールディングス)に入社。人材事業で営業や商品企画に従事した後、旅行事業の事業戦略や新規事業開発の責任者を担当。その後、美容事業や人材事業において事業部長及びプロダクト責任者を歴任し、事業成長を牽引する。2021年より株式会社メドレーに参画。上級執行役員として医療プラットフォーム事業を管掌。2025年7月株式会社BuySell Technologiesに入社。
リクルートで得たマネジメントとメドレーで得た推進力
――最初にこれまでのキャリアを教えてください。
2002年に新卒でリクルートに入社し、最初はHR事業に携わり、そこから旅行、美容と領域を横断しながら事業責任者、プロダクト責任者と経験を積みました。
当時のリクルートは個人に委ねられる裁量が大きく、大規模な事業をどう立ち上げ、成長させていくのかを現場で担う機会に恵まれました。大規模事業のグロース、新規事業立ち上げ、組織マネジメントなど密度の濃い経験ができたと感じています。
――リクルート時代、印象に残っている仕事は何ですか。
美容系サービス「ホットペッパービューティー」のグロースです。当時もホットペッパービューティーの売上は大きかったのですが、紙媒体からインターネットへの移行期で、成長が鈍化していました。そこで全国に普及させる戦略を仕掛け、日本中で使われるサービスの基盤を築きました。面白かったですね。リクルートではいわゆる“ディフェンス”の仕事も経験し、攻めと守りの両面で、事業に関わる意思決定に携わったことは大きな糧になりました。

――2021年にリクルートを退社後、医療ヘルスケアベンチャーのメドレーの上級執行役員に就きます。ベンチャーでどのような経験を積んだのでしょうか。
医療プラットフォーム事業の責任者を務め、プロダクト開発から事業組織の運営まで、コーポレートを除くほぼすべての領域を統括しました。
リクルートでは、大規模な事業を前提に、組織や仕組みを通じて成果を最大化する経験を積んできました。一方で、メドレーのようなスタートアップでは、前提となるリソースや仕組み自体が未整備の中で、自ら手を動かしながら事業を前に進めていくことが求められます。スピード感や意思決定のあり方も含め、違いは非常に大きく、刺激的な経験でした。
特にベンチャーでは、経営陣自らが現場に入り込む“プレイング”の要素と、意思決定・実行のスピードが不可欠です。リクルートで培ってきた事業グロース経験と組織マネジメントに加え、ベンチャーでの実行力と推進力が掛け合わさったことが、今の自分の基盤になっています。
バイセル参画の決め手になった2つの理由
――2025年7月にバイセルに参画しました。きっかけは何でしたか。
メドレーの役員の任期を終えた後は、次にすることをあえて決めず、ゼロベースで自身のキャリアを見つめ直す時間を取りました。海外に行ったり、起業家や投資家と対話を重ねたりする中で、改めて自分の軸を整理しましたね。
そうした中で生まれたのが、バイセルとの縁でした。リクルート時代の後輩であり、バイセル代表の徳重浩介さんと偶然再会したことがきっかけです。これまで一緒に仕事をしたことはありませんでしたが、対話する中で、互いの考えへの理解が深まっていきました。最終的に、2025年7月に入社を決めました。
――参画の決め手は何だったのでしょうか。
大きく二つあります。
一つは「アナログな巨大産業をテクノロジーで変革する」という事業の伸びしろです。
2010年代以降、日本のスタートアップは、スマートフォンの普及を契機に、インターネットを前提とした、プロダクト型ビジネスが成長を牽引してきました。しかし、そうした領域の国内市場は一定の成熟段階に入ったと個人的には考えています。
一方で、リユースをはじめとする実業領域では、依然としてテクノロジーが入り込む余地が大きい。リアルな顧客接点を持つバイセルのような企業が、AIを含む先端技術を組み合わせて事業を高度化させていく。このモデルに成長可能性を感じました。3兆円規模とされるリユース市場で、まだ売上高はグループで1,000億円ほど。テクノロジーを軸に事業成長できれば、インパクトは大きいです。
もう一つは、組織のあり方です。
バイセルは2016年、ミダスキャピタルによる投資の第一号案件になった企業です。プロフェッショナルな人材が自律的に意思決定し、組織を形づくる文化が根付いています。部門責任者が毎週集まり、合議で、かつスピード感を持って意思決定できる環境があります。そうした環境は他にあまりないように思います。それぞれが裁量を持ちながら価値を発揮できる点に魅力を感じました。
また、私自身の関心も会社内の一事業を成長させることから、会社全体をどう設計し、成長させるかへシフトしていました。
その点、バイセルでは人事制度や会社におけるさまざまなルールの設計から、M&A、組織再編に至るまで、企業全体をデザインする余地がある。経営のレイヤーで価値を発揮できる環境に身を置くことに、意義を感じ参画を決めました。

グループ9社を再編、「バイセル」ブランドに集約
――入社後すぐにグループ組織再編と店舗ブランドの統合に取り組んだと聞いています。
2026年1月1日からグループ15社のうち9社を再編し、バイセルに統合しました。着任当時は、各法人がそれぞれのの組織とブランドで運営している状態でした。店舗展開においては、複数のブランドと複数の法人が混在していることで、戦略の一貫性やブランドエクイティの面で、競合に勝ちきれない懸念がありました。
そこで「バイセル」ブランドに集約し、一元的にマネジメントする体制構築を目指し、子会社の再編・統合プロジェクトを立ち上げたのです。統合によって、一体としてマネジメントできる体制になったのは大きな進化だと思います。

意思決定から約4ヶ月ほどで、グループ再編を実行することができました。過去に吸収合併や組織統合を経験していたため、要諦を理解していたことも大きかったと思います。
非連続な成長過程で「変えること、変えないこと」
――3月26日付でCSOに就任しました。会社をどう変化させますか。
やるべきことはシンプルで、バイセルが中長期的に成長し続けるための戦略を練り、実行に移すことです。
変化させたいことは経営スピードと生産性向上です。会社は規模が大きくなると、どうしても動きが鈍くなります。それを防ぐために、入社初月にドキュメントツールをConfluenceに移行し、情報の属人化や分断を解消しました。誰もが同じ情報にアクセスできる状態を整えたことで、意思決定や次のアクションをスピーディに進められます。また、会議でのディスカッションの濃度を上げるために、会議体も見直しました。
AIエージェントが出てきて、ホワイトカラーの仕事のあり方が根本から変わる中で、意思を持ってプロジェクトをリードできる人材は強いです。そうした人材が集まる組織づくりをしたいですね。
変えるべきことがある一方、バイセルが掲げる「リユースを社会の当たり前にする」というミッションは、変えてはならないものです。循環型社会の実現に向けて価値を提供し続けるという方針は、AIが進化しても不変です。

国内成長を軸に、グローバル展開も加速
――最後に、今後の展望についてお聞かせください。
2025年12月期、当社の売上高は前期比67%増の1,006億円と大きく伸びました。ですが、市場全体では数パーセントに過ぎず、伸び代は大きいと見ています。今後は国内市場のオーガニックな成長を軸にしながら、中国やアメリカ向けの販売チャネル開拓など、グローバル展開も加速させていきます。
ミダスキャピタルのネットワークも最大限に活用しています。採用面での連携はもちろん、海外展開で先行する企業の知見を共有してもらうなど、相互に補完し合えるエコシステムは心強いです。
ミダスキャピタルが掲げる「企業群の時価総額を短期的に1兆円、中期的に10兆円、長期的に100兆円」という目標の一翼を担う存在になるためにも、バイセル単体で1兆円を目指せる企業へと引き上げていきます。
「リユース×テクノロジー」という領域こそが、AI時代において最も面白く、大きな成果を出せる場所だと、多くの優秀な人材に伝えたいですね。実際に私が1年近く携わってみて、アナログなリユース業界にテクノロジーを掛け合わせたときの爆発力は想像以上のものでした。
こうした業界の魅力や将来性を伝えていくことも、CSOとしての私の使命だと思っています。バイセルのさらなる成長にぜひ注目してください。
――ありがとうございました。