ベンチャーキャピタルファンドを運営する株式会社DUAL BRIDGE CAPITAL(以下、DBC)は6月1日、2号ファンド「DBC2号投資事業有限責任組合」の設立を発表しました。スタートアップのM&A実行支援、プレ・ポストIPOグロース支援、共同創業投資を柱とし、ファンドサイズは100億円超を予定しています。5月には初号案件として食品関連企業の旭東ホールディングス株式会社に投資を行いました。DBCの強みや投資方針、2号ファンドの戦略について、DBC代表パートナーの寺田修輔、伊東駿の両氏に聞きました。
◆プロフィール
株式会社Dual Bridge Capital
代表パートナー
寺田 修輔(てらだ・しゅうすけ)氏
東京大学経済学部卒業。2009年よりシティグループ証券株式会社にて株式調査業務や財務アドバイザリー業務に従事し、ディレクターや不動産チームヘッドを歴任。2016年に株式会社じげんに入社し、取締役執行役員CFOとしてM&Aを中心とする投資戦略、財務戦略を牽引。 2020年7月より株式会社ミダスキャピタルに取締役パートナーとして参画、 2023年4月にミダスグループ内のベンチャーキャピタル運営会社としてDual Bridge Capitalを創業し代表パートナーに就任。Chartered Financial Analyst(CFA協会認定証券アナリスト)。
代表パートナー
伊東 駿(いとう・しゅん)氏
慶應義塾大学院修了後、フューチャーベンチャーキャピタル株式会社にて既存投資先の支援に加え、新規ファンド組成業務を担当。ベンチャー企業の資金調達支援後、ニッセイ・キャピタル株式会社に入社。投資部長としてシードからレイターステージまで幅広く投資を実施した後、2023年5月にDual Bridge Capitalの代表パートナーに就任。
スタートアップを取り巻く3つの変化とは
――DBCは、ミダスキャピタルグループ内のVCとして2023年4月に設立しました。DBCの特徴、強みはどのような点でしょうか。
伊東
共同創業で会社をゼロから立ち上げること、そして投資先が成長するために必要なコーポレートアクションをご支援できること。この2点が最大の強みです。特に後者は、成熟した起業家ほどVCに求める傾向が強く、私自身、十数年VC業界に身を置く中で、その重要性は年々高まっていると感じます。
また、投資先が買い手となるM&Aを仕掛けていくこと、上場に向けた支援や上場後も連続的に成長する支援を、強く推進できると考えています。
特にM&Aにおいては、ミダスキャピタルグループとして2025年に総額約900億円のM&Aを実行し、その過程で同年だけでも1,000社以上の投資案件をソーシングしています。DBCの投資先となることで、このソーシングパイプラインにアクセスでき、スタートアップ単独でM&Aを進めるよりも、広い選択肢にアクセスできる点は、大きな価値だと思います。
――寺田さんは上場企業でCFOとしてM&Aを中心とする投資・財務戦略の立案・実行、伊東さんはニッセイ・キャピタルの投資部長としてスタートアップの投資経験をお持ちです。お2人の強みはどんな点でしょうか。
寺田
私たちはGPとして、大きく四つの経験があります。VCとして10年以上の投資経験、上場企業の経営経験、買い手としてのM&A経験、資本市場のプロフェッショナルとしての経験。私たちで調べた限りではありますが、独立系VCでこの四つすべてを有するGPチームは、おそらくほぼいらっしゃらないのではと思います。
――スタートアップを取り巻く環境は、激変していると言われています。日本市場にどのような変化が起きているのか、またスタートアップが活発にM&Aを進める背景は何でしょうか。
寺田
過去30年ほどのスタートアップは、基本的に「何も持っていない状態」から始めることが前提になっていました。つまり、少ない資本で事業レバレッジが効くIT・ソフトウェアなどの産業が中心でした。
しかし近年、このIT・ソフトウェアセクター自体が成熟してきています。この領域にいるだけで成長できる時代は終わった、というのが一つ目の変化です。
二つ目の変化は、東証の市場改革に伴い、グロース市場の上場維持基準が上場5年後に時価総額100億円以上へと引き上げられる点です。スタートアップは非連続な規模拡大を追いかけますが、よりその「高さ」が求められるようになりました。成熟化した産業の中で、さらなる規模拡大を求められるという厳しい状況です。その突破口となる一つが、スタートアップが買い手となるM&Aです。

スタートアップが買い手となるM&Aはここ2、3年で明らかに増えています。一つは今お話したようなマクロの流れがあること、もう一つはスタートアップに対してのファイナンス環境は流動性が高い、つまり供給が非常に多い状況だということです。
よくスタートアップ冬の時代と言われますが、決してそんなことはありません。当社も含め新しいVCが、どんどん立ち上がっています。先進国で、政府が業界に対してこれほど資金提供している国は他にありません。VCのファンドレイズも高い水準で続いていますし、ファンドレイズ済みの未投資資金も潤沢にあります。
三つ目として、ミダスキャピタルの投資先企業である株式会社GENDA、ほかにAnyMind Group株式会社、直近だと株式会社技術承継機構など、未上場の段階から連続的にM&Aを重ねて、上場時に高い評価を受け、そのM&A戦略を継続して大きくグロースする会社が何社も出てきています。
連続起業家の方ほど、M&A戦略を活用したスタートアップを経営するという機運が高まっていますし、この流れが逆戻りすることは考えにくいと思っています。
セイワホールディングスへ伴走
――2023年10月に設立した、1号ファンドの進捗状況について教えてください。
伊東
1号ファンドは37社に総額53億円の投資を行い、新規組み入れを完了しています。このうち、初のIPO事例として株式会社セイワホールディングス(以下、セイワHD)が2026年3月27日に東証グロース市場へ新規上場しました。先ほどお話したM&Aを通じて成長を遂げてきた会社で、上場後も株価は順調に推移しています。
DUAL BRIDGE CAPITALという社名は、創業期と成長期の二つで架け橋になるという思いを込めています。グロース市場でIPO後に停滞する会社が多い中、上場とその後の成長を支援する架け橋となれた事例ではないかと思っています。

――セイワHDに対し、具体的にどのような伴走をしたのでしょうか。
寺田
まずはデットファイナンスの最適化です。セイワHDは連続的なM&Aをされており、有利子負債がそれなりに大きくなっていました。ミダスキャピタルとして60社以上の金融機関から1,700億円以上の借入をさせていただいており、強いネットワークを持っています。これを活用し、貸出余地が大きな金融機関で、より低い利率で借入れをしていただきました。
セイワHDに投資をした2025年4月の段階で、IPOまで1年ほどのタイミングでした。ですのでファイナンスの最適化やIPO主幹事体制、上場株機関投資家の方のご紹介など、セイワHDがフェアな形で公募時の時価総額を決められるように準備を進めさせていただきました。
結果として、セイワHDが目指していたのと概ね同水準で時価総額で上場することができました。上場してから1カ月半がたちますが、私たちは株式を1株も売却していません。IRや上場後に再開するM&Aなど、継続的に支援を行って参ります。
M&A実行支援、IPO支援、共同創業投資、3つの投資手法
――今回立ち上げた、2号ファンドの概要と戦略についてご説明をお願いします。
寺田
2号ファンドのサイズは、100億円超の規模感を目指します。100億円のうち管理報酬などを除いた真水の投資可能額が80億円ほどになります。1社あたり3億円前後、30社程度を予定しています。
特に重視する投資手法は3つで、一つはご説明してきたように、M&Aを活用した成長支援です。二つ目はプレ・ポストIPOのグロース支援、3つ目が共同創業投資になります。

――2号ファンドは、1号ファンドと比べ、グロース投資、オポチュニスティック投資の比率を高める方針です。
伊東
1号ファンドはシード・アーリーステージ8割、レイターステージ2割でスタートしました。2号ファンドでこの割合について考えたときに、シードステージは想定していたよりも混み合っている印象を持ちました。そうした背景もあり、私たちの介在価値をより大きく出せるところで投資をしていくのではいいのではないかと議論しました。
その介在価値を出せる投資ステージが、グロースとオポチュニスティックです。ビジネスとしての検証が進み、キャッシュフローを生みだしている会社が、より高さや、非連続な成長を遂げていくための投資をいたします。グロース投資、オポチュニスティック投資は全体の50%ほどを予定しています。
――初号案件として2026年5月、旭東ホールディングス株式会社(以下、旭東HD)への投資を実行しました。投資決定までの経緯、決め手は何でしたか。
寺田
旭東HDは、食品添加物や調味料、香料、食品の製造機器メーカーを連続的にM&Aしてグロースしている会社です。母体は旭東化学産業という創業70年以上の老舗で、代表取締役の田口貴之さんは、3代目で、新卒で野村證券に入られた後、30歳前後で会社を継いでいらっしゃいます。
経営のバトンを引き継いでから事業を大きく成長させ、M&Aした会社も大きくされてきて、業績規模としても十二分なのですが、「桁を変える」挑戦をしたいという思いを持たれていらっしゃり、田口さんから直接メッセージをいただいたことが最初のきっかけでした。
決め手の一つが、田口さんの経営者としてのトラックレコードが傑出していた点です。詳細な数字はお伝えできませんが、ご自身が代表になられてから、著しい業績改善を達成し、従業員の方への賞与の総額も拡大されています。
食品関連の製造業ということで、マーケットは非常に大きく、この領域で積極的にM&Aをするプレーヤーも相対的には限られています。食品業界のインテルをイメージしていただければと思いますが、全体の品質を上げる裏方として支えていく存在の会社、事業を束ねていらっしゃいます。大きなビジネスチャンスがあると考えています。
半年ほどコミュニケーションをとらせていただく中で、8億円という当社としては1号、2号を通じて最大の出資をさせていただきました。唯一の外部株主として、投資、財務、経営戦略に伴走するパートナーとして選んでいただきました。
ミダスキャピタルとの連携、M&Aソーシングに強み

――ミダスキャピタルとの連携も強みかと思います。投資先企業にどう生かしますか。
寺田
今、特に密度高く取り組んでいるのはM&Aです。ミダスキャピタルにもDBCにも、投資先のM&Aを支援する専任の担当者がいます。彼らと私とでグループ全体のソーシングを行っていますので、より幅広い選択肢をご提示できます。また、M&A投資実行する際の銀行借り入れについても、グループのバンクフォーメーションやネットワークを活用させていただいています。
ノウハウの共有という点では、BuySell Technologies、GENDA、AViCと上場企業を経営する経営者の方々から私どもが得られる知見をフィードバックすることも、投資先にとっては意味があるのではと思います。
――DBCの中長期の展望についてお話ください。また、その実現のために採用に注力しているポジションはありますか。
寺田
DBCのミッションは「世代や産業を代表する傑出した経営者の輩出」です。今、特に注力しているのはHRバリューアップ担当者の採用です。
ミダスキャピタルにおける投資先バリューアップ貢献の中でも、強く貢献できているのは、傑出した人材の採用です。 傑出人材の採用を行うために、ミダスグループとして3,000名を超えるタレントプール、傑出人材のネットワークを構築してきました。そのうえで260名以上の CXO 人材、経営人材といった方々にご入社いただいています。
これをDBCではキャピタリストが個別に行っていますが、より構造的にこのミッションに取り組むポジションをお任せしたいです。傑出した人材が入って会社の景色が変わり、企業価値が飛躍的に高まる局面を何度も見てきました。DBCのミッションやこのポジションの意義に共感頂ける方にぜひご入社いただきたいです。
――最後に、DBC設立から3年になりますが、寺田さん、伊東さんご自身の変化や手応え、今後についてお話ください。
伊東
若手の成長や成熟が、中長期で戦うVCビジネスでは重要です。この3年間でキャピタリストが4人増え、6人体制になりました。実は、これまで他社でのキャピタリスト経験者は1人も採用していませんが、各自が自身の案件として投資を実行し、会社が大きく成長していることが成果です。若手キャピタリストの育成に注力します。
寺田
私は伊東さんと違い、VCとしての仕事はDBCが初めてで1号ファンドでは手探りの部分もありましたが、3年間で自分たちの型が出来上がってきました。その型を2号ファンドのコンセプトとして抽出し、実行していきます。
――ありがとうございました。
※役職とインタビュー内容は2026年6月1日時点の情報です。