ミダスキャピタルは2026年7月16日、投資家や金融機関関係者に向けた「MIDAS IR DAY」を開催しました。同社のビジョンや投資先企業群(以下、ミダス企業群)の事業に対する理解を深めていただくことを目的としています。イベントレポート後編では、株式会社GENDAと、グロース企業3社のM&AとPMI方針について紹介します。(前編はこちらです)
――後半は、株式会社GENDAのアミューズメント事業におけるM&AとPMIについて深掘りするセッションが行われました。
<登壇者>
株式会社GENDA 代表取締役社長CEO 片岡 尚氏
株式会社GENDA 常務取締役CSO 羽原 康平氏
株式会社GENDA 取締役 アミューズメント施設事業最高責任者 二宮 一浩氏
株式会社ミダスキャピタル プリンシパル 小林 駿氏(モデレーター)
GENDAの事業概要と実績
片岡
GENDAは創業8年目の会社ですが、M&Aを成長戦略の中核に据え、世界一のエンターテインメント企業を本気で目指しています。現在の事業は、ゲームセンター「GiGO」を世界で約760店舗展開しているほか、カラオケ事業では業界3位の「カラオケBanBan」を約460店舗運営しています。
さらに、国内最大級の外貨両替機事業「SMART EXCHANGE」や、映画配給会社のギャガなど、幅広いエンターテインメント領域で事業を展開しています。

こうした基盤を築いてきた原動力がM&Aです。創業以来、6年間で63件のM&Aを実行し、2026年1月期は売上高1,707億円、調整後EBITDA228億円を計上しました。創業から7年で売上高1,000億円を突破した実績は、日本のスタートアップとして最速記録です。
小林
国内アミューズメント事業におけるM&A実績について教えていただけますか。
羽原
大きな転機は2020年末に実施したセガエンタテインメントのM&Aでした。これを起点に「GiGO」ブランドを展開し、連続的に16件のM&Aを推進することで国内ナンバーワンのプレーヤーになっております。
しかし、市場全体を見渡せば地方を中心に中堅・中小事業者が多く、大手のシェアを合計しても過半数には満たないため、継続的なロールアップによる拡大余地が残されています。当社の強みは、アミューズメント業界出身の経営陣のネットワークを活かした案件ソーシング力と、「GiGO」限定景品の供給や仕入れコストの最適化により、M&A直後からシナジーを創出するPMIにあります。

二宮
アミューズメント市場全体の規模は、機器販売を含めて約7,200億円と言われています。施設事業の場合は約5,400億円で、年率5%ほどで成長している市場です。その牽引役はクレーンゲームで、アニメ・キャラクターIPの人気やインバウンド需要の拡大が来店者数を押し上げています。
M&Aで新たに加わった店舗に対しても、当社のIP調達力や景品供給力、運営ノウハウを即座に共有・導入できる体制が整っています。M&A直後から早期にシナジーを発揮できるため、グループ全体の成長をさらに加速させる好循環が生まれています。
今後は池袋や秋葉原といった都市型大型店舗への投資と、クレーンゲーム需要に合わせた業態転換を軸にさらなる成長を図ります。
片岡
投資規律においては、一貫してEPS向上に資する案件のみを実行しており、63件のM&Aで実質的なのれん減損は発生していません。CFOや経理部長、管理部長といった経営人材を送り込み、上場企業の子会社としてふさわしいガバナンス強化も徹底しています。
海外事業の進捗と今後の方針
小林
海外(北米)のアミューズメント事業のM&Aの手応えはいかがでしょうか。
羽原
もともとは、米国法人Kiddleton(現 GENDA Americas)を通じて無人ゲームコーナー「ミニロケ」を展開していましたが、2024年にNational Entertainment NetworkをM&Aし、約8,000拠点のミニロケをグループに迎え入れました。さらに2025年には、同じく北米でゲームセンターとミニロケを展開するPlayer One Amusement Groupもグループに加わり、現在は北米全体でゲームセンター200店舗、ミニロケ1万2,000拠点を運営しています。
北米・欧州の巨大市場に対し、国内ロールアップと並行してPMIを強化し、本格的なM&Aを展開していく方針です。

片岡
北米事業のPMIを進める過程で一部つまずきがあったのは事実です。複数社を統合する中で、仕組み面の不備により、オペレーションが想定通りに回らない場面がありました。一方で、「北米に日本のアニメIPを持ち込み、既存の景品や商品を入れ替えていく」という戦略の重要性は、むしろ一層確信を強めています。
日本のIPホルダーの協力のもと、“オールジャパン”で現地のファンへ価値を届ける基盤が確実に構築されつつあります。現在はAIやテック領域の精鋭チームを現地へ投入し、オペレーションの再構築を図っています。
――最終セッションでは、グロース企業による連続的なM&Aを活用した非連続成長戦略をテーマにディスカッションが行われました。
<登壇者>
株式会社AViC 代表取締役社長 市原 創吾氏
株式会社セイワホールディングス 代表取締役社長 野見山 勇大氏
株式会社GROWTH VERSE 代表取締役会長兼CTO 南野 充則氏
株式会社Dual Bridge Capital 代表パートナー 寺田 修輔氏(モデレーター)
各グロース企業の事業概要と実績
最初に3社の代表が事業概要と経営実績を紹介しました。
市原
当社は2018年に創業し、エンタープライズ企業向けにマーケティング支援を提供しています。オーガニック成長とM&Aを組み合わせ、統合的な支援体制を構築しています。今期(2026年9月期)は売上高約40億円(前年比49.5%増)、営業利益11億円(同55.6%増)を見込んでおり、同業の営業利益率が一桁台にとどまる中、当社は20%後半〜30%程度を継続して高成長と高収益を両立しています。
当社の強みは、データドリブンで従業員の工数を管理できるマネジメント体制です。全事業で営業利益率30%を共通目標として掲げ、買収先に対してもPMIを通じて同水準へ引き上げています。
野見山
2015年に父の町工場を事業再生した経験を原点に、後継者不足に悩む中小製造業のM&Aを推進し、これまで18社をグループに迎えました。営業や購買、採用などの経営機能をセイワホールディングスに集約することで、各社が本業に専念できるプラットフォームを構築しています。

M&Aについては、競争優位性を確立しやすい1,000億〜3,000億円規模の市場10カテゴリーを厳選しています。例えば関東エリアのカチオン塗装市場では、3社の統合により約10%のシェアを確保しました。小規模事業者が多い同市場において、材料の共同調達によるコストメリットや設備の有効活用、人材の相互配置など、グループならではのスケールメリットを活かした独自の強みを築いています。
南野
当社はAIを活用した買収先企業のバリューアップに注力しています。2021年にマーケティングAI Agent「AIMSTAR(エイムスター)」を、2024年に人流分析AI SaaS「ミセシル」や売上管理AI SaaS「Zero」を、2025年には電話対応や自動応答を担う「電話放送局」をM&Aしました。加えて、各社へのAI導入支援やAIエンジニアによるエージェント構築・基盤整備も手がけています。
M&Aの強みはドメイン知識と顧客基盤を一気に獲得できる点です。直近の「電話放送局」の例では、新規参入すれば立ち上げに3年かかる領域を、M&Aによりメガバンクから中小企業までの顧客基盤を持った状態で引き継ぎ、20年蓄積されたレガシーシステムをわずか4カ月でモダンなシステムへリプレイスしました。
連続的なM&Aの背景と選定基準
寺田
自社の展開市場で、連続的なM&A戦略が機能すると考えている背景や、選定基準について教えてください。

市原
AIの普及によって差別化が難しくなってきた今、これからは「誰が語るか」という文脈が重要になっている時代です。そうしたなかで、業界全体で利益率が一桁台にとどまるのは、機能を細分化した組織構造が一般的であることが一因です。
しかしAIの普及により、細分化は必ずしも必要ではなくなりました。当社は一人の社員がマルチな役割を担う「二毛作・三毛作型組織」を推進し、生産性と利益率の向上を実現しました。
案件精査では、自社にはない中核的な強みを持つ企業を対象としています。例えばタレントの発掘・育成に長けた株式会社リアレーションや、ライバーの人材育成やブランディングで高い実績を持つ株式会社Spicaのように、ゼロから構築するには多大な時間を要する領域で突出した強みを持つ企業を厳選しています。
野見山
売上だけを追い求めるのではなく、営業利益を伸ばし続けることが、連続的なM&Aを行っていく上でのセンターピンであるべきだと考えています。
日本の製造業は、GDPの約2割以上を占める大きな産業ですが、新しい取り組みになかなか踏み出しにくいという業界特有の閉鎖性があります。このため、M&Aに対して「会社を乗っ取られるのではないか」といった不安やネガティブなイメージを持つ経営者も少なくありません。
そうした中で、私たちはM&Aした企業を永続的に保有し「ものづくりグループ」として拡大する方針をとっています。このアプローチは、ニッチな領域で高い技術力を持つ経営者の方々にも、受け入れられやすいものだと感じています。
案件精査では、利益の源泉となる競争優位性が5年、10年と持続可能かどうかを見極めます。私自身の過去の経験に加え、グループ内には製造業の現場を知るメンバーも多いため、彼らと議論しながら、長期的な競争力と環境の持続性を判断基準にしています。
南野
LLM(大規模言語モデル)の登場で業務自動化が進む一方、AIの進化に対応できずに成長が停滞しているソフトウェア企業はM&Aの良い機会です。投資先の見極めについては「AIでどれだけバリューアップできるか」を独自の選定基準に置いています。
具体的には、DD段階でAIエンジニアがプロトタイプを試作し、M&A決定後には実際の顧客にAIエージェントをPoC導入することで、成長可能性を検証しています。いざM&Aした後に実態がよくわからない状況に陥らないよう、AIによるバリューアップは力を入れています。
3社3様のPMIと重視するポイント
寺田
各社におけるPMIの「型」を教えてください。
市原
PMIでは、M&A後にCFOと経営企画が全案件に入り、対象企業の社長や経理担当者と事業構造やPLの作り替えについて共有します。その後、半年から1年で営業利益率を20〜30%に引き上げるという目標を、トップダウンで掲げ、実行します。
また、M&Aした企業と一体となってチームとして動くため、交流会、グループ全体のサークル活動などを積極的に実施し、人的な繋がりも強化することに努めています。
野見山
製造業のPMIで最も重視するのは安全面です。グループへ迎え入れた際に、労働災害が起これば、レピュテーションにも影響するため、PMIの初期段階で安全性や品質チェックを徹底しています。このプロセスを丁寧に行うことで、現場の従業員の皆様にも「利益ばかりを追い求めているのではなく、事業そのものをきちんと理解してくれている」と感じていただけるようになります。

南野
私たちがM&A後にまず着手するのは、グループインした企業への「Wow!」の提供です。具体的には、現地へ開発チームを派遣してユースケースを見極め、事業に合わせたAIエージェントを試作・デモ実演することで当社の本気度を体現し、現場との深い信頼を築きます。
実装の形が見えてきた段階で、マーケティングや営業の人的リソースを投じ、売上成長の支援を行うほか、並行して経理や企画といったバックオフィス側も伴走し、コスト最適化を中心とした経営管理を推し進めています。
寺田
非常に興味深いお話を伺うことができました。市原さんは、トップダウンでの目標設定と人的繋がりの強化で組織を一枚岩にすること、野見山さんは安全面を重視し、安心感と信用を得る、南野さんは、Wow!を提供することによって信頼を勝ち取るという、まさに3社3様のPMIの取り組みを教えていただきました。ありがとうございました。
※役職とインタビュー内容は2026年8月1日時点の情報です。