株式会社ミダスキャピタル

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DATE.
2026.07.21
CATEGORY.
interview

訪問看護・介護の現場と経営をつなぐ「対話力」 トヨタ、コンサルを経て介護の変革を担う

訪問看護・介護の現場と経営をつなぐ「対話力」 トヨタ、コンサルを経て介護の変革を担う
TITLE.
訪問看護・介護の現場と経営をつなぐ「対話力」 トヨタ、コンサルを経て介護の変革を担う
DATE.
2026.07.21
CATEGORY.
interview

在宅医療・介護事業所の業務効率化と収益改善をサポートするプラットフォームを展開する株式会社ゼスト。ゼストの執行役員であり、グループ会社である株式会社ハピネスケアの取締役として経営全般を担うのが田中さくらさんです。トヨタ自動車株式会社とコンサルティングファームで培った分析力と事業推進力を生かし、介護現場のスタッフらとの対話を重ね、課題を聞き取り、経営改善につなげています。

ゼスト代表取締役社長CEOの一色淳之介さんと、田中さんにこれまでのキャリアや事業の優位性、7月21日に発表した新事業「Homie」について聞きました。

◆プロフィール

株式会社ゼスト
代表取締役社長CEO
一色淳之介氏

新卒でP&Gジャパンのマーケティング部門に所属し、日本及びシンガポールでヘアケアブランドのマーケティングに従事。その後、創業期の株式会社ヤマトキャピタルパートナーズ(現YCP Group)に参画。パートナーとして、投資先企業の再生や、様々な企業に対するマーケティング、経営戦略、さらには新規事業立案等のコンサルティング支援を行い、同社の上場へ貢献。2022年9月1日付けで株式会社ゼスト代表取締役社長 CEOに就任。

株式会社ゼスト 執行役員
兼 株式会社ハピネスケア取締役
田中さくら氏

新卒でトヨタ自動車株式会社に入社、国内280社の販売会社マネジメント業務に従事。2019年からは株式会社YCP Solidiance(現YCP Group)でコンサルティング事業を中心に複数案件に従事。 パーソナルケア商品の新ブランドローンチ、ローンチ後のマネジメント 、中堅ヘルスケア機器企業におけるカスタマーサポート体制の再編などを担当。2023年から株式会社サニーサイドアップグループの経営戦略室立ち上げ、子会社管理業務に従事。2025年1月1日付けで株式会社ゼスト 執行役員に就任。

経営陣と向き合う経験が、成長につながった

――最初に、田中さんのこれまでのキャリアについて教えてください。

田中
新卒で入社したトヨタ自動車では、全国のディーラーを対象に財務データの分析や経営状況の把握、マネジメントに3年間従事し、社会人の基礎や課題解決の考え方を身につけました。

その後、より一社一社の経営課題に向き合い、インパクトを生み出したいと考え、コンサルティングファームのYCP Groupへ転職しました。

YCPでは、ジュニアでもクライアントの経営陣と直接対話する「バッターボックスに立たせてもらえる環境」があり、これが大きな成長につながりました。

YCPには4年ほど在籍しましたが、一番お世話になった上司が一色さんです。一色さんとの仕事では、あるクライアントのプロジェクトが印象に残っています。ブランドや新規事業立ち上げ、その後の運営、マネジメントまでを担当し、企画から成果を出すまで伴走したことは、大きな学びになりました。

コンサルティングの仕事もやりがいはありましたが、将来的には事業会社の経営に携わりたいと考えていました。

――ゼストへ参画したきっかけは何ですか?

田中
ゼストがM&Aを検討していたタイミングで、一色さんから「新会社の経営を担ってほしい」と声をかけていただいたことがきっかけです。当時、私はPR会社で経営戦略室の立ち上げに携わっていて、転職は考えていませんでした。

ただ、一色さんから何度も説明を受ける中で、ゼストのビジョンや成長戦略が明確で、大きな成長可能性を感じました。また、経営を打診された会社がグループ内でどのような役割を担い、どこが成長の鍵になるのか具体的に描かれていたため、「自分がどう貢献できるのか」とのイメージをはっきりと持てました。そうしたことから、2025年1月にゼストに参画しました。

現場の価値観に寄り添う「伝え方」と「経営視点」の両立

――現在の田中さんの職務について教えてください。

田中
ゼストがM&Aを通じてグループへ迎え入れた、訪問介護・看護事業の株式会社ハピネスケアの取締役として、経営全般に携わっています。訪問看護ステーションの現場のサービス提供体制の構築から、組織運営、さらには事業成長に向けた戦略立案も担当しています。

――初めての介護業界に戸惑いはありませんでしたか。

田中
初めて携わる業界だったため、まずは現場を理解することから始めました。1on1でじっくり話を聞いたり、個別に食事をしたりしながら、現場の考え方や日々感じている課題に耳を傾け、信頼関係を築くことを大切にしました。

経営の視点から改善の方向性は見えても、それをそのまま現場へ伝えるだけでは良い変化にはつながりません。現場の皆さんが何を大切にしているのかを理解し、その価値観に寄り添いながら、一緒により良い方法を考えることを意識しています。

例えば、訪問看護・介護では、スタッフの急なお休みなどにより訪問が難しくなるケースがあります。そこで、可能な範囲で振替や代行の体制を整え、利用者の方への影響をできるだけ少なくできる運用を目指しました。

その際も、「収益のため」という話ではなく、「必要なケアをできるだけ途切れさせず、利用者の方に安心していただくため」という目的を共有することで、現場にも納得していただきながら運用を進めることができました。

訪問看護・介護の現場では、スタッフ一人ひとりが「利用者に貢献したい」という強い思いを持っています。その価値観を尊重しながら、同じ方向を向いて取り組めるようなコミュニケーションが何より大切だと実感しています。

スケジュール最適化に特化したゼストの強み

――在宅医療・介護分野において、ゼストの強みは何でしょうか。

一色
ご存知の通り、在宅医療・介護領域は非常に伸びている業界です。国は、「住み慣れた地域で人生の最期まで暮らせる」ことを目標に、在宅を中心とした地域包括ケアシステムの構築を進めています。

一方で、現場の人手不足や、介護報酬や診療報酬の改定などで、事業運営の難易度は高まっています。このような状況で、訪問介護関連のITサービスでは、電子カルテ作成や、介護報酬のオンライン請求が多いなか、ゼストがユニークなのはスケジュール領域に特化している点です。

訪問看護・介護の現場では、スケジュール管理が非常に重要です。人員数が同じでも訪問件数の設計次第で生産性は大きく変わります。スケジュール設計を最適化できれば、1日3〜4件だった訪問を4〜5件へと増やすことができ、人手不足の課題解決につながります。事業所にとっても収益が改善します。

ゼストはこの最適化にいち早く着手し、スケジュール管理を起点に、経営全般の周辺サービスを幅広く提供していることが強みになっています。

――プロダクト開発で、意識している点はありますか。

一色
移動の最適化もそうですが、我々の強みは、その前段階にある「誰をどの利用者にアサインするか」というマッチング設計にあります。

訪問看護・介護では、利用者の体調や生活環境に応じて、継続的に信頼関係を築きやすい体制を整えることが重要です。「誰が担当するか」まで含めて最適化する必要があります。

こうした業界特有の複雑な条件こそが、一般的な移動ルートの最適化技術を持つ企業の参入を難しくしているわけです。

私たちが目指しているのは、現場の意思決定に深く踏み込み、業界特有の制約を考慮したうえで最適化を実現することです。現場の収益構造にダイレクトに寄与する、基幹システムに近い役割を担うプロダクトです。

保険外収益サービスを拡大し、事業所に還元

――7月には新事業「Homie(ホーミー)」を発表しました。診療報酬や介護報酬外のサービスで、事業所に収益を還元する内容です。

一色
重要な社会インフラであるにもかかわらず、訪問介護・看護事業における売上の約98%は保険適用のサービスに依存しています。そのため、診療報酬や介護報酬の改定に売上が左右されてしまいます。そして社会保障費が一層逼迫していくなか、訪問介護の廃業は増加し、介護職員の低処遇という実情があります。

この構造的な課題の解決策として挙げられるのが、介護保険外のサービスです。自費領域のサービスで、新たな収益源を確保できれば安定した収益を確保できます。訪問看護・介護の現場では、利用者との深い信頼関係が構築される場合が多く、その関係性を活かした付加価値サービスの展開は十分にあり得ると考えています。

ただし、現場の看護師や介護士の方々は、看護と介護の提供が使命です。付加価値サービスだからと、業務外のことをお願いするのは難しさがあります。現場の専門性や職業観を尊重しながら、持続可能な形でどう価値提供していくかが課題でした。

そこで、自然な形でデジタルを取り入れたいと考えるようになりました。こうした背景で生まれたのが「Homie」という家族向けのアプリケーションサービスです。介護に関わる家族の負担軽減を目的に、訪問スケジュールの共有や調整、ケア内容の可視化をアプリ上で行える機能を備えています。

今後は、施設探しから生前整理、不用品処分、保険、不動産相続までエンディングマーケットに関わるサービスを集約した、プラットフォームを目指したいと考えています。

デジタルサービスで得る利益を現場の事業者へ還元する仕組みを整え、新たな収益モデルを確立していきます。

――アプリのリリースによる具体的な狙いや現場へのメリットは何でしょうか。

一色
現場では家族との連絡手段が依然としてアナログであり、日程調整が大きな負担になっています。特に遠方に住む家族は、ケアの実態を把握しにくく、訪問介護の価値が伝わりづらいという課題があります。

そうした状況において、日々の看護・介護の記録や様子を可視化できれば、離れて暮らす家族も安心できます。また、現場のプロフェッショナルな介護への信頼と感謝が深まります。

公的保険に頼らない民間資金を現場へ還元し、持続可能なビジネスモデルを確立することが、Homieを通じて実現したい未来です。

田中
ご家族との電話連絡がつきにくく、コミュニケーションの確保に苦労している事業所は多いため、スケジュールや記録がデジタルで共有できる仕組みは現場にとって助けになります。

また、現場で働く方々は本当に献身的な一方で、業界全体が「大変そう」というネガティブなイメージを持たれがちな側面もあります。

今回のHomieが目指す構想は、現場のモチベーション向上だけでなく、業界全体のイメージ改善にもつながります。ハピネスケアで得られる現場の声を開発へ還元し、より良い仕組みづくりに貢献したいです。

一色
Homieの開発には現場の「心の部分」の理解が欠かせません。どれほど論理的に正しい仕組みでも、共感が得られなければうまくいかないからです。現場の課題感を把握している田中さんの存在は心強いですね。

「論理」と「感情」のギャップを埋める、人と組織を動かす力

――お互いの仕事ぶりについて、傑出していると感じる点をお聞かせください。

一色
田中さんはトヨタ自動車やコンサルティングファームでの経験を通じて、数字分析や課題の打ち手など論理的に経営を捉える力に優れています。ただし、合理性があって論理的に正しいからといって、人は必ずしも動くものではないと思います。

田中さんは、現場スタッフの感情を受け止め、相手の気持ちを理解しながら真摯に対応できる人間力があり、それが最大の強みです。徹底的な対話を通じて合意形成を図っていくコミュニケーション能力は、事業を確実に前進させる大きな価値となっています。

実際、ハピネスケアではスタッフの離職がほとんどなく、創業時の社長も残って経営を支えてくれています。

田中
一色さんは、ビジョンを実現していくうえで、何を優先すべきかという意思決定が非常にクリアです。ゼストのように成長スピードが速い会社では、限られた情報の中でも数字やファクトに基づいて判断し、ときにはリスクを取ることも求められます。一色さんは常に数字とファクトを頭に入れて意思決定しており、その判断の的確さには学ぶことが多いです。

私自身も、経営を任せていただくなかで、決断に迷う場面では一色さんに相談して、考え方や判断の仕方を学んでいます。

――ミダスキャピタルによる相互扶助の恩恵を感じるのはどのような場面ですか。

一色
一番大きいのは人材の繋がりです。個人の繋がりだけでは限界がありますが、ミダスキャピタルのコミュニティでは参加者同士が有機的に優秀な人と人を繋いでくれる文化が根付いています。

採用においても紹介という形で、人間性や価値観の面でも信頼できる方々と出会えるのは非常に大きな魅力です。

田中
現場に深く入り込むほど、目の前の出来事や感情に引っ張られ、客観的な視点を見失いそうになることがあります。そうしたときに助けられているのが、ミダスキャピタルのバリューアップチームの存在です。「そもそも何を実現したいのか」という視点で壁打ち相手になっていただき、課題の捉え方から見直すアドバイスをもらえることはありがたいです。

また、追加のM&A案件を検討する際にも、投資本部の方から進め方や論点整理について専門的なアドバイスをいただける環境があり、大きな支えになっています。

超高齢化社会の課題解決に、これまでにないプロダクトで挑戦できる

――最後に、ゼストで働く魅力についてお聞かせください。

一色
ゼストで働く魅力は、多くの先進国がこれから直面する、超高齢化社会という巨大な社会課題に、これまでにないプロダクトで挑戦できることです。誰かが歩いた道を効率よく進むよりも、誰も経験したことのない未知の領域に自分たちだけの道を切り拓く面白さがあります。

今後もM&Aを通じて、組織や事業を拡大させていきます。ゼロからの事業創出や、経営に挑戦したい方にとっては非常にチャンスが多い環境です。

田中
今後さらに重要性が高まる在宅医療・介護の領域に向き合い、その課題解決に当事者として深く関われることは社会的意義が大きいと感じています。

現場で働く方々がよりやりがいを持ち、誇りを持って働ける業界へ変えていくプロセスに関われることは、ゼストで働く醍醐味です。

変化の多い環境だからこそ新しい挑戦を通じて、成長できる余地が多くあります。社会に対して価値を生み出しながら、自身も成長できる。その両方を実感できるのがゼストの魅力だと思います。

※役職とインタビュー内容は2026年7月20日時点の情報です。

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