ミダスキャピタルは2026年7月16日、投資家や金融機関関係者に向けた「MIDAS IR DAY」を開催しました。ビジョンや投資先企業群(以下、ミダス企業群)の事業に対する理解を深めていただくことを目的としています。投資方針や投資先企業のM&AやPMIの取り組みについて2回に分けてレポートします。
ミダスキャピタルのビジョンとバリューアップ支援
――冒頭、代表パートナーの吉村英毅氏が登壇し、ビジョンと活動状況について説明しました。
ミダスキャピタルは「世界に冠たる企業群を創る」というビジョンのもと、企業群の時価総額を2027年に1兆円、2035年に10兆円、2050年に100兆円を目標に掲げています。最大の特徴は外部のLPを持たず、すべて自己資本のみで運用している点です。
運用期限がないため長期視点での支援が可能であり、原則すべての投資先でマジョリティを取得してIPOへ導き、上場後も半永久的に筆頭株主であり続けることで独自の「ミダス企業群」を構築しています。現在、ミダス企業群は20社に上り、全体の時価総額は約5,800億円、当社の持分は約2,900億円規模に達しています。

ミダスキャピタルの代表的なバリューアップ支援内容は三つあります。
一つ目は、ロールアップM&Aの支援です。各社独自の推進に加え、ミダス本部も投資案件を発掘・提案します。M&Aの経験が少ない企業に対しては、ソーシングからDD、ディール実行、PMIまで一貫して支援しています。実績として、2025年はミダス企業群全体で33件、約900億円を実施しています。
二つ目は、経営人材のソーシングと紹介です。特に、経営人材のリファラル採用には注力しており、過去5年間でミダス企業群にジョインした方は、経営層を中心に累計270名に上ります。
三つ目は、AI活用の推進です。ミダス企業群ごとにAI活用を進めていますが、ミダス本部としても横断的な知見を提供し、各社を支援しています。
例えば株式会社GENDA(以下、GENDA)は、エンターテインメント事業の主要な収益源となるクレーンゲームで、各店舗の個別判断に委ねられていた商品配置を、AIによる需要予測で最適化し、年間数億円のEBITDA改善を実現しました。
株式会社BuySell Technologies(以下、BuySell)でも、過去データに基づくリアルタイムな適正価格の算出や、出張買取訪問のスケジュール最適化など、AIを業務全般に組み込むことでオペレーションの高度化と効率化を推進しています。

成功を再現する三つのポイント
――続いて、プリンシパルの小林駿氏が、ミダス企業群の成功の再現性について説明しました。
ミダス企業群における成功の再現性は次の3点に集約されます。一つ目はM&Aノウハウの共有と強固なネットワークです。案件を重ねることで得た知見や成功・失敗事例をミダス企業群全体で共有し、再現性のある成長につなげています。またM&Aの豊富な実績により、市場からは「ストロングバイヤーズ」として認知され、2025年には年間1,000件を超えるM&A案件をご紹介いただいています。
こうした成果は、金融機関の皆様との強固な信頼関係によって支えられています。このネットワークを個社単位ではなく、ミダス企業群全体の資産として最大限に活用できるのも、私たちの大きな強みです。

二つ目は傑出した経営チームの組成です。株式会社リクルート出身の徳重浩介氏がBuySell社長に就任後、売上は約3倍、営業利益、時価総額ともに約6倍へと引き上げました。また、GENDAの片岡尚社長も前職のイオンファンタジーで培った信頼とネットワークを強みに、セガエンタテインメント等の大型M&Aを主導するなど、創業7年で売上高1,000億円超を達成しました。
さらに直近では株式会社トライアルホールディングス・前代表取締役社長の亀田晃一氏が、株式会社イングリウッドに参画しました。このように傑出した経営人材をミダス企業群に迎えられることが、成長を最大化する原動力となっています。
三つ目は、経営陣同士が知見や人的ネットワークを共有し、成長を支え合う「相互扶助」の文化です。
その象徴が、広義のリファラル採用です。
例えば、ある候補者の方とすごく一緒に働きたいけれども、事業内容は候補者の方にとって第一希望ではない場合があるとします。そのときに「B社、C社もありますよ」と、ミダス企業群の経営者の方が、企業群の別の会社を紹介することがございます。候補者の方は、最適な環境で挑戦できますし、企業群にとっても自社のネットワークだけではなかなか出会えない人材に「お墨付き」で出会えるのは、大きなポイントです。
また、採用以外にもM&AやIPOの知見共有、営業や組織づくりの情報交換など、様々な場面で相互扶助が機能しています。

BuySell Technologiesの事業概要と実績
――次にミダス企業群によるセッションが行われました。最初に総合リユース企業のBuySell Technologiesの経営戦略が紹介されました。
<登壇者>
株式会社BuySell Technologies 代表取締役社長兼CEO 徳重 浩介氏
株式会社BuySell Technologies 社外取締役 秋山 友紀氏
株式会社BuySell Technologies 社外取締役 服部 太一氏
株式会社Dual Bridge Capital 代表パートナー 寺田 修輔氏(モデレーター)
徳重
BuySell Technologies(以下、BuySell)は、「出張訪問買取」と「店舗買取」という2つの事業の柱があります。前者は自社ブランド「バイセル」に加え、業界第2位の買取福ちゃん、骨董・古美術買取の日晃堂をM&Aでグループに迎え入れています。
当社はM&A後のシナジー創出や価値向上を明確に描き、解像度の高いPMIを推進する点を強みとしています。

加えて、競争力を支えるもう一つの要素が「独自のロジスティクスとデータ活用」です。当社では買い取った全ての商品を一元管理できるロジスティクス拠点を備えており、テクノロジーを駆使して国内外の販売チャネルの中から「最も高く・早く」販売できる最適なルートを選定しています。
また、1商品あたりの営業利益を細かくデータ分析して、最も利益率が高くなる販売チャネルを導き出しています。こうしたデータドリブンな仕組みが成長を牽引し、2019年の上場以来、売上高は10倍以上に拡大しました。今期は売上高約1,400億円、営業利益は156億円を見込んでいます。
寺田
一般的に大型M&A案件は、のれん償却費なども出て、営業利益率が低下する会社も多いのかなと思います。それにもかかわらず、今期(2026年12月期)は、営業利益率を11.1%まで見込んでいます。おそらく過去最高ですが、利益率を改善させている背景は何でしょうか?
徳重
要因は二つあります。一つ目は、のれん負けしない価格でM&Aを実行する「投資規律の徹底」です。二つ目は、労働集約型のビジネスだからこそ、従業員の離職率を下げ、モチベーションを上げて、KPIマネジメントの磨き込みを徹底しました。その結果、トップラインを上げながら、営業利益率も上げ、改善することがこの数年うまくできたのではと思います。
社外取締役からの評価と期待
寺田
服部さんはこれまで株式会社SHIFTなどの取締役会に出席されてきたかと思いますが、BuySellの取締役会に対する印象はいかがですか?
服部
日々の細かな業務課題というよりも、「会社をどう非連続に成長させていくか」というテーマについて、議論を重ねられる環境だと感じています。中長期的な視点での議論に多くの時間を割いているのが魅力ですね。
寺田
秋山さんが社外取締役に就任された経緯や、就任から現在までの4年間で、取締役会で議論の内容などに変化があればお話ください。

秋山
岩田匡平会長から「IR戦略を強化する上で、資本市場に精通した取締役として参画してほしい」と打診されたことがきっかけです。当時からBuySellの成長性を感じており、参画を決めました。2022年3月の就任から、会社の成長に伴い、取締役会での議論も長期的な成長戦略や、時価総額5,000億円、1兆円を目指す上で必要な組織づくりなど、より中長期的なことにも目を配れるようになったと変化を感じています。
海外展開で求められる「ディフェンス力」
寺田
数々の成長企業を見てこられた服部さんの目から見て、BuySellの成長戦略をどのように評価されていますか?
服部
「強い経営陣」「確立されたビジネスモデル」「巨大なリユース市場」という
三つの成長要素が揃っています。売上の伸長と、利益率改善が両立できており、生み出されたキャッシュを成長投資やM&Aに活用し、PL、BSの両面で稼ぐ。企業価値を高めるサイクルが整っています。

先ほどグローバル展開のお話も出ましたが、これからはこのビジネスモデルが海外マーケットで通用するか試していくフェーズにきたと思います。海外展開が進むにつれ、経営体制の国際化と、企業価値を持続的に高めるためのディフェンス力が求められます。
寺田
徳重さん、今後の方針についていかがでしょうか。
徳重
国内においては既存店舗のオーガニックな成長に加え、積極的なM&Aによる店舗網の拡大に注力していく予定です。また、グループへ迎えたブランドは順次リブランディングを進めながら、出張買取・店舗買取の両分野でナンバーワンを目指していきます。
今後もオーガニック成長を軸に、売上高、営業利益ともに年率20〜30%程度の成長を維持していければと思います。M&Aに関してはあくまで投資規律を維持しながら、当社との親和性が高く、成長余地やシナジーが見込める案件について積極的に検討していく方針です。
グローバルに目を向けると、中国やアメリカといった海外のリユース市場は極めて大きく、顕在化している市場規模だけでも日本の約3倍となる30兆円以上に達しています。この巨大なグローバル市場にどうアクセスしていくかが、今後の成長における重要なポイントです。
後編は、投資先企業群のセッションをレポートします。
※役職とインタビュー内容は2026年8月1日時点の情報です。